souxouquit’s blog

オヤジロッカー souxouquit の蹴音映書網業泉食考♪

佐々木則夫さんの話

目標達成のプロセス
24年勤めたNTTを2006年に退職。なでしこジャパンとU19のコーチを2年契約。その時点で、組織的な中に『個』があり、ディシプリンを厭わない日本の女性にはサッカーが合うと直感した。優勝したなでしこの選手たちが「特別」なのではない。サッカーに必要とされる要件を日本女性はそもそも備えているのだ。
2008年からなでしこジャパンの監督。それまで2004年アテネ五輪でのベスト8が最高だったので、北京五輪で「4強を目指す」と言って、結果4強入りした。しかし、USA、ブラジル、ドイツの3チームは「優勝」を目指してやっていた。このままでは絶対に優勝しないと思い、2011年W杯の目標は、ずばり「優勝」とした。


なでしこvision
2008年にJFAが制定したなでしこvisionはこのように謳っている。
1.サッカーを日本女性のメジャースポーツにする。
2.なでしこジャパンを世界のトップクラスにする。
3.世界基準の「個」を育成する。
その中で「ひたむき、芯が強い、明るい、礼儀正しい 」という4点を「なでしこ」らしさと定義しているが、これは歴代日本女子サッカー代表のOGの意見を集約したもの。具体的イメージを言葉でもハッキリ伝えるようにした。


チームのマネジメント
チームを作る4年間を3年と1年で分け、最初の3年は80%監督主導、最後の1年は60%選手主導、と変えた。最終的に、2010年の東アジア大会優勝時には、80%選手主導だった。試合のペース、コンディショニングは彼女たちの自主性に任せた。そもそもサッカーは、試合がひとたび始まったら、ほとんど監督にはコントロールできないのだ。
目標を掲げたら、ブレない。これがリーダーなのだから、自分もブレずに居た。
スタッフも充実した。コミュニケーションを、密に、タイムリーにとることを強く意識した。例えば「XX選手にはこういうところを直してほしい」とか「次はXXを先発で使う」とか、ピッチ外で、総務やトレーナーや広報にもまったく同じように伝える。そうすると選手は「則さんブレてないな」と感じ、信頼してくれる。逆にスタッフは、選手はこういうリアクションでしたとか、こう反論されたとか、自分が見ていないところでの選手の受け止め方をフィードバックしてくれるし、そのうち、その場で「則さんの意図はこうなんだよ」とフォローもしてくれるようになった。


何故優勝できたのか
チームのコンセプトを「攻守にアクションするサッカー」として取り組んできた。2007年に澤穂希ボランチにコンバート&キャプテンに指名。ワシントン・フリーダムではいまひとつ才能を活かし切れなかった澤が、抜群に上手いボール扱い、戦術眼、嗅覚を存分に発揮し、見事復活。W杯ではMVP&得点王に輝いた。ボランチがMVP&得点王ということは「組織」の勝利、ということ。16チームで最も身長が低い&最軽量だが強い、美しい、見ていて楽しいサッカーをする。「女バルサ」という最大級の賛辞も頂いた。
何故優勝できたかを考えると、色々タイミングがよかったと感じている。
NHKが全試合を放映してくれたのは良かった。
震災の影響も大きかった。節電でナイター設備が使えない、千葉に至ってはグラウンドが液状化。例えば丸山桂里奈東京電力の社員だった。スタミナに課題があったが、信じて待ってるぞと声をかけ、見事にコンディションを上げてW杯に合流、ベスト4を決める地元ドイツ戦で延長に決勝点を決める活躍をしてくれた。選手たちの「大好きなサッカーができる」という気持ちの高まりが、優勝の大きな原動力となった。


素晴らしい「戦える」仲間とやれた
決勝のPK戦の前、円陣を組みながら何故笑ったのかよく訊かれるが、ファイナルのあの場の雰囲気がすごく良いし、選手もみな元気だし、自分としては腹を括っていたので、自然と笑みがこぼれた。
決勝の相手、USAもすごくリスペクトしている。あんなにいい決勝戦になったのは、まさに米国のおかげ。後日ワンバクが「これまでの結果至上主義、成果主義が変わった瞬間だった」と言っていた。素晴らしいことだ。


自分自身の背景
1人っ子、4回の転校、土建業を営む父が部下を大切にする背中を見て育った。
NTTでは浦和料金事務センター(料金未払い苦情処理係)での採用だった。
これまでサッカーが出来たのは、様々な方のお陰だ。
NTT関東サッカー部時代。大病した妻を看護し、全快した後の「サッカーやりたいんでしょ」の一言で選手として復帰。
指導者としてはすごく横柄だったのを、高橋さん(高橋英明氏、現川口市議会議員?)に戒められた。煙草もその頃止めた。
女子の指導者になる際も、妻&娘が「あんまりカッコつけずに自分を出して女子サッカーの監督をやりなさい」と背中を押された。


佐々木流指導理念イレブン
指導者として肝に銘じている11項目がある。責任・情熱・誠実さ・忍耐・論理的分析思考・知識・適応能力・勇気・謙虚・パーソナリティ・コミュニケーション。この11項目は「掛け算」。1つでもゼロでは駄目。11人で戦うサッカーと同じ。
「コミュニケーション」とはユーモアを交え問い掛ける「問答」。「大枠」「中枠」「小枠」で明確に説明するスキルは勿論のこと、本音を引き出す問答の「質」こそ重要。
トップコーチの役割はリーダー・マネージャ・コーチに分担されているが、この役割も「掛け算」。どれが欠けても駄目。
大好きであること。失敗を恐れずチャレンジすること。それが大事。
成功の反対は、失敗ではなく、チャレンジしないことである。
成功のプログラムとは、それに向けて準備することである。


林成之さんに学ぶこと
北島康介をはじめトップアスリートに「勝負脳」理論を伝授した脳外科医・林成之さんに学ぶところが大きい。
勝負脳を鍛える方法は3つ。否定語を使わないこと、素直であること、目的と目標を区別すること。
また「人間の脳の持つ3つの本能的欲求」に関する示唆が素晴らしい。『生きたい』という生存欲求、『知りたい』という知的欲求、『仲間になりたい』という集団欲求。つまり脳は「他者との違いを認め、共に生きること」を本能的に求めている ということで、ビジネスで言えば「自分と共に客もいい思いをする」のが正しい。「統一・一貫性」や「自己保存」という、いわば後天的な癖を基準に考えると、時として誤って判断してしまう。
そういう意味で、W杯で優勝と同時にフェアプレー賞を貰ったのは実に画期的なこと。これまで男子も含め名だたる国際大会で優勝チームがフェアプレー賞を同時に受賞することは、ほとんど例がない。


おやじギャグの数々

  • なでしこジャパン」を命名する時も、いろいろ意見が出た。「やたがらすレディース」にならなくて本当によかった。
  • ノンフィクションのスピルバーグ(ハラハラドキドキ結果オーライ)とドイツの新聞に書かれた。
  • 「問答」は、家族を練習台にして試した後、チームで実践。ギャグも含め、厳しいチェックを受ける。