souxouquit’s blog

オヤジロッカー souxouquit の蹴音映書網業泉食考♪

孤高のソロ・アーティスト

ハミル東京公演の2日目。
実は俺はこの人を神様級に崇め奉っていて今回の公演も実に4度目なのだが、全く冷静さを持ち得なかった3年前に比して、俺の中の何かが蠢き始めた。

  • 86年:初めて“生”に触れた 何が何だか分らなかった
  • 88年:東京2回公演に連続参加 レパートリーの多さに付いていくのがやっと
  • 04年:16年振りで感覚がリセットしちまった 寧ろ神々しさに拍車がかかった
  • 07年:初めて冷静に鑑賞できる土台が出来た?

こんな感じなのである。

The killer lives inside me; yes, I can feel him move.
Sometimes he's lightly sleeping in the quiet of his room;
but then his eyes will rise and stare through mine,
he'll speak my words and slice my mind inside.
Yes, the killer lives.

The angels live inside me, I can feel them smile;
their presence strokes and soothes the tempest in my mind
and their love can heal the wounds that I have wrought.
They watch me as I go to fall;
well, I know I shall be caught while the angels live.

で、何が変化したのか。


今回初の試みということで、ハミルはメドレーに挑戦していた。
一曲づつ集中が途切れるのを防ぐ意味では、確かに成功していたのかも知れない。しかし両刃の剣、その分観客にも過度の集中を強いるし、第一パフォーマーとして本人の集中が続かなくて、結果としてミスタッチの嵐*1に陥っていたのだ。
これって、プロとしてどうよ、ということである。


幸か不幸か俺たち観客は、超絶的なテクニックの演奏に最近は慣れてきてしまっている。俺は別段“テクニック至上主義”でも“インスト命”でもなく、寧ろ逆のタイプの音楽観を持っているが、それにしてもちょっと酷い。聴くに耐えない。
何度も言うが、彼は孤高のヴォーカリストである。俺は、ヴォーカリストとして彼を超える声に遭遇したことはない。現に今回のギグ、これまでで最高の声を聴かせてくれた。4年前に心臓病を患い日本公演がキャンセルされたとは思えないパフォーマンスである。その彼が、ミスタッチに合わせるよう、いやハッキリ言えばミスタッチを誤魔化すようにヴォーカルラインを崩し、艶やかな声でなく上辺の音で曲を濁らせている。


これは本末転倒ではないか。
これでは天使と悪魔が同居した唯一無二の彼の声が、台無しじゃないか。


この単純な事実にふと思い当たった瞬間、俺は醒めた。
同時に神様一介のうた歌いに引き摺り下ろされた。


この日はギグ終了後、“ファン交流会”が企画されていた。
俺は彼と握手し、倉庫の奥から引っ張り出してきたアナログ版にサインして貰い、一緒にディジタルカメラの中に収まった。
俺はいろんな感慨をもってこの一連の出来事を、まるで他人事のように、5m上空から客観的に眺めるように俯瞰していた。


この人は、もはや神様ではない。
孤高のソロ・アーティストである。
だって、そうではないか。彼ぐらいのアーティストなら、バックを完璧にこなす芸達者なミュージシャンなどいくらでも調達できよう。その方が彼も声に集中でき、格段に音が“聴き易く”なるのだ。それを“彼と一心同体である他人など居ないのだからたとえ演奏が下手でも彼自身の弾き語りが最高だ”と思える人しか集まらないギグを志向しているのだ。
孤高のソロ・アーティストと呼ばずして、何と呼ぶのだ。


こういうエンターテイメント性の極めて低いギグには、彼に心酔している濃いフォロアーしか集まらない。結果、いつまでも大衆性が得られず、質の良いギグが展開できない。完全に負のスパイラルである。
彼は、少数の原理主義者の前でミサを執り行う密教の教祖でしかない。


今でも俺は、彼の音楽と、ミュージシャンとして彼の生き方を愛している。
しかし、彼を神扱いすることは最早なくなった。


セットリスト
PETER HAMMILL Live at PIT-INN, TOKYO, 10th Nov. 2007

  1. My Room
  2. Too Many of My Yesterdays
  3. Time to Burn
  4. Empire of Delight
  5. Labour of Love
  6. Silver
  7. Bubble
  8. Your Tall Ship
  9. Gone Ahead
  10. (In the) Black Room
  11. Autumn
  12. Sleep Now
  13. Meanwhile My Mother
  14. Shell
  15. A Better Time
  16. Stranger Still
  17. The Birds<encore>

 

*1:ピアノの伴奏は、これまで4回の公演でも特に酷かった。
極端に言うと、4小節に1度はキーの押さえ間違い、時にはコードすら間違ってしまう。
これまでの公演では、バイオリンが一緒だったり、シンセをMIDIで繋いで音を厚くしたり、ギターに持ち替えたりして目立たなかったのかもしれないが、今回はグランドピアノだけだったので特に目立った、ということなのかもしれない。