souxouquit’s blog

オヤジロッカー souxouquit の蹴音映書網業泉食考♪

自虐の詩

俺が自虐の詩に出会ったのは、2004年2月。何気なく眺めていたBSマンガ夜話で取り上げられていたのがキッカケだった。全出演者が異口同音にこの哲学マンガは泣ける!と、熱病でうなされたようにゼッサンしていたのだ。次の日に渋谷のブックファーストに走ったが、売り切れちゃっていたっけ。


で、早速アマゾンで注文した原作を読んで、ご多聞に漏れずブッ飛んだわけです。
こんな奇跡の4コママンガがまさか実写映画になるとは思ってもみなかったので、最近まで公開するなんて知らずに出遅れちまったが、先日行ってきましたよ。


まあ、チマタではちゃぶ台返し*1が話題のようだけど、単なる乱暴モノのダメ亭主に健気に尽くす薄幸の女の物語と思ったら、大間違い。
スローモーションのちゃぶ台返しのシーンが平面的表層的にギャグとして描写されていた序盤に対し、幸江の過去が暴かれる中盤から、物語は俄然立体感と色気を帯び、最後は熊本さんとの怒涛の再会と圧倒的なカタルシスへ雪崩れ込む。これは、人の幸せとは何なのかを考えさせられる哲学マンガ、平成の文芸大作(さしずめオダサクの夫婦善哉か)と言っていい。


原作には無い怪我のエピソードはちょっと常套手段っぽくて反則かとは思ったが、全体としては原作に忠実に、というか、寧ろ4コマの宿命的である「ブツ切り感」をうまく纏めてメリハリをつけた、と言えなくもない。脚本執筆チームの先ずは緻密な仕事の成果だろう。


あと、キャスティング。
俺はさ、あの幸江さんですよ。中谷美紀じゃあまりに美人過ぎてミスキャストじゃん、ぐらいに思っていたけど、違ったね。美形の中谷が演じることで、堕ち切った立ちんぼ時代の色香が一層際立ち、ソバカスすっぴん顔とのギャップが人間の幅となって“幸江”という人物にリアリティを持たせることにあっさり成功している。
ミスキャストと言えば、寧ろ西田敏行の方だろうか。脇役が上手すぎるのも考えモンだ。あのお父さんが(演技の上で)あんなに強いと、キャラが壊れて、物語が危うく崩壊する寸前だった。あと僅かバランス崩したら釣りバカ日誌になっていたトコロだ。


堤幸彦という監督は、例のTRICKにしてもケイゾクにしても、笑いがザラザラしていて、ちょっと気になる存在だった。決して万人受けする笑いではなくて、アナーキーでフリーキーな感じ。優等生的な三谷幸喜あたりとは真反対の、ブラックな笑い。今回ますますファンになった。
何かの対談で“モンティ・パイソンなんか好きですよ”と言っていたのに思わず膝を打った。この映画でも、小ネタが満載。赤ん坊のホクロとか。


この映画には今年の邦画の主要な賞をカッさらってもらいたい。
文句なしの★★★★★。お勧めである。

 

*1:このゲームはバカバカしいけど面白いよ。
ちなみに261回転で100m以上も跳んでコリャすごいっ!と思ったが、35,785番だった。
俺も馬鹿だけど、俺より馬鹿な連中が何万人も居ると思ったら、嬉しくなってきたよ。