souxouquit’s blog

オヤジロッカー souxouquit の蹴音映書網業泉食考♪

ジョー・ザビヌル死去

最近は謎の雑誌"Z"の表紙なんか飾っちゃってたのでまだまだこの爺さん元気だわいと勝手に思い込んでいたところの突然の訃報。ショックで絶句する。。。


ジョー・ザビヌルは相棒のウェイン・ショーターと共に、60年代終わりのマイルス・デイビスバンド(所謂"Electric Miles")にて決定的な仕事をした後、70年代にWeather Reportを結成した。Heavy Weather(77年)、Mr. Gone(78年)、8:30(79年)、Night Passage(80年)、Weather Report(82年)、Procession(83年)、Domino Theory(84年)とほぼリアルタイムで聴いてきた俺は、進歩することを忘れた下手なプログレッシブ・ロックより、スタンダードに回帰して退屈なジャズより、よほど彼らの音に浸っていた。
そう、ドップリ浸っていたんだ。ボーカリストの俺が彼らのインストナンバーに。


幸いなことに、彼らのステージに俺は3度接している。

81年の厚生年金はナイト・パッセージ後のツアー。ザビヌル、ウェインのフロント2人に鉄壁のリズム隊ジャコ・パストリアスとピーター・アースキン、ボビー・トーマスJr.を加えたバンドの凄まじいインタープレイに、しばし呆然としちまった記憶が今でも鮮明だ。俺が観た歴代のギグのうち、多分5本の指に入るステージだった。
次に目撃した83年のライブ・アンダー・ザ・スカイのステージまで僅か2年なのだが、この間にWeatherは決定的岐路を迎える。そう、ジャコ(とピーター・アースキン)の脱退である。


そもそもWeatherというバンドは、ウィーン出身でインテリなザビヌルの紡ぐオーケストレーションの上にソロイストとしてのウェインのサックスが絡む実験的プログレフュージョンであって、あとはリズム隊が淡々とリズムを刻んでいればよかったのだ。つまり初期のWeatherは、ザビヌルに完全にコントロールされた2人の「ユニット」だったのである。ところが名盤Black Marketのレコーディング最中にジャコが合流してからは*1このザビヌルの構想は見事に軌道を外れていく。ユニットがバンドに変容し始めた瞬間である。
ジャコがもたらしたグルーブや、メロディ楽器としてのベースの可能性、時に狂気を孕んだかのようなパッショネイトなプレイスタイル。マイルスから袂を分かった若きザビヌルとウェインがたった2人で始めた実験場は、新たな個性を得てジャズやロックの枠組みを超えて拡大し、開花させていったのだ。火花散る4つの個性によるインプロビゼーション。新たなメロディメーカーを得て拡がった楽曲のバリエーション。そんな化学反応がその後のHeavy Weather, Mr. Gone, 8:30, Night Passageといった名盤を生み出す原動力となったのは間違いない。アイディア、テクニック、斬新さ。どれをとっても世界最高のバンドであったWeatherの、文字通りの全盛期である。


盛者必衰とは言うのものの、ジャコが抜けた後のバンドは悲惨に迷走する。マントラを始めとしたヴォーカルをフィーチャーしたナンバーで打開を図るが(同時にビクター・ベイリーという若き天才を育みはしたが)、失った個性はあまりにも偉大だった。そうしてWeatherは、シーンからも次第にフェイドアウトし、86年には解散してしまう。


出来ることなら、8:30のHeavy Weatherのツアーや、フォアキャスト:トゥモロウのDVD*2に収められているMr.Goneのツアーの頃に観たかったが、それはない物ねだりだな。81年に「最後の煌き」を確認できただけでもよしとしよう。ジャコはジャコで、82.9.5に横浜スタジアム(Aurex Jazz Festival)で観ているし(これは後述することにしよう)。


これで、俺の大好きだったWeatherは完全に過去のバンドとなった。
まぁ、ザビヌル爺のこと。天国でジャコとジャムっているに違いない。


合掌。


 

*1:ジャコがWeatherに合流したときのエピソードは、とても興味深い。
デモテープを送りつけたジャコにザビヌルが電話をかけた。
「お前、とってもいい音出してるし気に入ったんだけど、エレクトリックも弾けるのか?」
つまりザビヌルでさえジャコの奏でるフレットレス・ベースの音がウッド(アコースティック)ベースに聞こえたという訳で、ジャコが当時どれほどユニークな存在だったかよく判る。

*2:ベストCD3枚組はともかく、このコンピレーションの価値は一枚のDVDにこそある。
4人の凄腕ミュージシャンによる火花散るバトルと、同時にえも言われぬ美しさで纏め上げられる楽曲の数々。星の数ほどあるジャズの名演奏の中でも間違いなく最高の部類に入る演奏が、ディジタル・リマスターで蘇った。
("Young and Fine Live!"として既発。俺は当然ながら重ね買い。)
音源は'78年「Mr.Gone」のツアー中ドイツで収録されたもの。「8:30」より少し後の音源だろうか。「Mr.Gone」の楽曲のとそれまでの定番曲の程よく混ざったセットリストのギグが、丸々体験できる。ソロパートもそれなりに凄いのだが、圧巻は"Teen Town"あたりからラストの"Elegant People","Badia"へ至る怒濤のアンサンブル。これを観ずしてフュージョンを語る勿れ。否、ロックを含めた70年代の音楽シーンを語る勿れ、そういう演奏である。
このDVDを「体験」してあなたが感じる鳥肌は、確かに、奇跡の瞬間に立ち会った証である。