souxouquit’s blog

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YouTubeの戦略?

この記事が眼を引いた。

ちょっと前にはCESでのCBSのCEO Leslie Moonves氏のこんな*1基調講演もあった。
昨年後半から模索してきたコンテンツプロバイダとの「法令順守コンテンツ」配信の流れが、ここで一気に加速する気がする。というのはこれまでの“コンテンツアグリゲータ”との提携*2から“放送局”という配信まで手がける事業者との提携へ更に一歩踏み込んでいるからだ。


もともと変な会社である。
悪い意味ではなく、あらゆる意味で非常にユニークな成り立ちの会社だ。
YouTubeを一言で表現すれば「ユーザーがアップロードした動画をFlash形式で公開できるサイト」ということになろう。元PayPalのチャド・ハーリーCEOら3人がYouTubeを設立したのは、たった2年前。*3ハーリーCEOは開発のきっかけについて「ディナーパーティーで撮影した静止画と動画を参加者に配ろうとした時、動画の配布だけがとても難しかったため、簡単にシェアできる仕組みが欲しいと思った」と語っている。
オープン当初はそれほど注目されていなかったが、2005年12月、米NBCの人気番組“Saturday Night Live”の映像がYouTubeで「違法に」公開され、米国で物議をかもすと共に知名度が一気に上がった。そうなると、人気TV番組から映画から好きなタレントが出演しているCMから音楽のプロモーションビデオに至るまで、キーワード(=タグ、メタデータ)検索によってYouTubeにアップされている動画ファイルを貪るように視聴するユーザーが激増。調査によると、2006年9月期の月間利用者は、日本から700万人、米国からは1900万人に上る。*4


ここで敢えて「違法で」と書いたのには意味がある。
YouTubeは公開当初から「著作権違反、18禁、道徳的にグレーなコンテンツが爆発的な集客に加担している」との批判を常に浴びてきた。それに対し当のYouTube側は、謂わば確信犯的に「映像コンテンツが集まる場」としてメディア化を志向してきたキライがある。
つまり、当初から謳っている「著作権侵害コンテンツのアップロード禁止の呼びかけ」も、2006年3月に導入した「10分以上の動画をアップできない仕組み」も、茶番である可能性が高いということだ。
「問題のあるコンテンツの削除」も、対処するにはしている。先の“Saturday Night Live”の映像の件でもNBCからの抗議を受け、すぐに削除した。また、2006年12月には、JASRAC*5やJVA*6等日本の著作権関連の23団体・事業者の著作権侵害ファイルの削除要請に対し、対象となった計29,549ファイルすべてを直ちに削除した。 オンクレーム対応で誠実さをアピールしているものの、違法ファイルの根絶にはほど遠いと誰もが感じている。

こんなYouTubeを、しかし圧倒的に支持しているのは、エンドユーザーである。代表的なのはこんな声だ。
2007.2.20 アイリサーチの「YouTubeに関する利用実態調査」より

YouTubeに対する考えについては「個人が楽しむ分には問題ないサイトだと思う」が圧倒的に多く、約70%を占めている。
「特に問題のないサイトだ と思う」と回答した6%を加えると80%弱の人が「著作権などの問題なし」と考えており、「著作権侵害など問題のあるサイトだと思う」と回答した18%を大きく上回った。

また米国にはこんな調査結果もある。
2007.1.29 米HarrisInteractive社の調査結果より

YouTubeを頻繁に見る人の3分の1は、以前よりテレビを見なくなったとしている。また、4分の3はYouTubeに広告が挿入されたら今より見なくなると回答した。

つまり誤解を恐れず言えば、ユーザーは「広告なしのTV番組」をオンデマンド視聴したいのであり、時間に縛られ広告の煩わしい現在のTV放送局の配信の方法こそを「茶番」と思っている、ということだ。
それが証拠に、2007年2月に発表されたはてなの“Rimoリィモ)”*7が大人気*8である。


こういうユーザーの支持とメディアパワーを背景に、ビジネスを考えてくれるパートナーもいろいろやってくる。
2006年4月にはSequoia Capitalは800万ドルの追加資金投入を決めたし、2006年7月には遂にGoogleが16億5000万ドルでの同社買収を決断したのも記憶に新しい。
しかし一方で、前にも書いたけどいつまでたってもビジネスモデルが描けていない。


纏めると、YouTubeを巡る議論の流れと成功要因はこんな感じ:

  • エンドユーザーには徹底的に使いやすい様々な機能を無料で提供
    • 簡単で審査の不要なファイル・アップロード
    • キーワード検索
    • コンテンツ作成者に評判をフィードバックするレイティング、人気投票機能
    • blog貼付、サイトからメール送信等の「口コミ支援の仕掛け」
  • 他映像共有サービスと違って、初期の成功ポイントを「人をとにかく集めること」に置き、コンテンツの「違法投稿」著作権に関してはクレーム事後対処を決め込む。ビジネスモデルも後回し。
  • 人が集まりメディアとして力を持ったため、既存メディア/広告屋/Web 2.0系企業が「排斥から利用へ」と熱い視線を送るようになってきた。そこでビジネスモデルも違法コンテンツ問題も一緒に解決しよー、というノリ。
  • 広告モデルとB2Cモデル、B2Bモデルのハイブリッドの匙加減が、これからの鍵か。

ここで言うB2Cモデル、つまりCGM的文脈での「ユーザー生成コンテンツのビジネス性」については、また日を改めて考察することとしよう。

 

*1:どっちのニュアンスが本当なのか、今後も注目! だな。
米国のTV局は“YouTube”と手を結ぶ
新旧メディアのギャップはもはや存在しない

*2:YouTube、UMG/Sony BMG/CBSとコンテンツ契約を締結

*3:2005年2月。

*4:2006.10.23 日米のYouTube利用者数推移

*5:社団法人日本音楽著作権協会

*6:社団法人日本映像ソフト協会

*7:YouTubeの人気動画をテレビのようにだらだら見られる動画サービス。PS3Wiiブラウザを使えば、まるでCMのないテレビ番組のようにYouTubeの人気動画が見られる。アクセスするといきなり“番組”が流れる。気に入らなければチャンネルをプチプチ変えるか「→」ボタンを押して次の番組にスキップ、飽きたら「電源ボタン」を押して終了、簡単さはまさに家電並みだ。

*8:ユニークユーザー数が、開始から10日間で30万人を突破した。