souxouquit’s blog

オヤジロッカー souxouquit の蹴音映書網業泉食考♪

子供たちは無言でベンチに戻ってきた

洗小FCの代表チームの公式戦があった。
実は、6チームで5試合の総当たりリーグなのだが、ここまで1分け2敗。6チーム中2チームが後期には下部リーグへ降格するので、残り2試合、ひとつも落とせない「後のない」状況であった。


このチームは、気持ちが前へ出ない。でも、「最近の子供はモノに囲まれて基本的に豊かだし、飽食だからハングリーさがなくて云々」という一般論で片付けるつもりはない。現に彼らの1年上、2年上、3年上の代表チームは、もっと喰らい付いてきた。「喧しい!」と怒鳴りつけても喋りやまない「蹴球的興奮状態」にあった。この代は、ややもすると、真剣さが足りない、(蹴球的意味で)成熟していない、としてコーチの間でも諦めに似たムードも漂っていた。俺も、正直諦めかけたのも事実。正確に言うと、やる気になっている連中の興味を惹く手段はいくらでも持っているけど、そもそもやる気ってどうやったら引き出せるんだろうか、その方法論を持たないまま呆然と立ち尽くしていた、と言う方が正確か。いずれにせよ、意図していたよりずいぶん準備不足の状態で当日を迎えてしまった、ということなのだった。
俺は、現場ではウォームアップの担当だった。試合開始1時間前、既に戦いは始まっていた。俺はこの子らを刺激し、盛り上げ、心身のコンディションをピーキングするため、ちょっとづつ仕掛けていった。すぐ横でアップしている対戦相手を意識しながら、最初に「大声で相手を威圧するように」ジョグ。トラップの練習も、ウェッジ*1でなく、全て一歩前へ出てクッション*2のコントロール。俺にショルダーチャージをカマしてボールを奪う練習も敢えて課した。万全のウォームアップが終了。
試合開始5分前、俺はあるオマジナイを試してみた。子供たちに目を瞑らせ、俺が手を叩いたら目を見開いて、これから言うことを示してくれ、というやつ。

  • 自信のある目を見せてくれ
  • 次は自信ある顔を見せてくれ
  • 次は自信ある態度を全身で示してくれ

これは、2年程前に先輩コーチに教わったのを多少アレンジしたもの(結構子供たちには効きますよこれ)。この時、何だか確信めいたものが、俺の心に突然降って湧いてきた(照れのある子供たちだと、これ、笑ってしまったりするのね)。こんなに素直に大人の言うことを聞く連中いるだろうか? むしろ、真剣さが足りなかったのは、俺たちの方じゃないのか? こいつらの顔を見ろ、真剣そのものじゃないか、と。
俺は、子供たちをピッチに送り出す前、最後に言った。この試合はお前たちのものだ。洗小FCの代表チームだといっても、ピッチで戦うのはお前たちなのだから。ましてコーチのものじゃない。最後まで諦めずに、自分と戦ってこい。


タイムアップのホイッスルと共に、子供たちは無言で、目には溢れんばかりの涙を湛えて、ベンチに戻ってきた。結果は1-1の引き分け。勝っても負けてもおかしくない、緊迫した素晴らしいゲームだった。勝ちきれなかった悔しさが、子供の態度から滲みでていた。スロースターターだった彼らが、何とか土壇場で、俺と繋がりあってくれた瞬間だった。やっぱり「教える」なんでてオコガマシイな、教わっていることの方がどれ程多いか。
終戦で勝ち点3を積み上げれば残留が確定する、「首の皮一枚つながった」状態。だけど、最終戦はやってくれるよ。彼らは彼ら自身のために。もう勝敗はどうでもいいね、俺は。


しかし、子供たちと真剣に向き合うと、疲れるねぇ。この歳だと2試合/日はもう持たないかもしれない。でも、コーチ冥利に尽きるってもんだねこれは。

*1:ウェッジコントロール:ウェッジとは楔(くさび)の意。ボールを足と地面で挟み込むようにしてトラップする技術。

*2:クッションコントロール:ボールを空中で迎えに行き、インステップやインサイドで勢いを殺してトラップする技術。ウェッジより確実性は劣るが、競り合う相手より先にコントロールする利点がある。FWには必要な技術。このトラップの名手はジダン。足に吸い付くトラップは芸術的だ。